IoT開発者にとって定番のESP32ファミリーですが、2025〜2026年にかけて大きな進化を遂げています。新チップの量産開始、Wi-Fi 6対応、AI推論機能の強化など、注目すべきアップデートが目白押しです。この記事では、ESP32エコシステムの最新動向を網羅的にまとめます。
新チップラインナップの拡充
Espressifは従来のESP32シリーズに加え、用途特化型の新チップを続々とリリースしています。
ESP32-P4:高性能HMI向けSoC
ESP32-P4はEspressif史上最もパワフルなチップです。デュアルコアRISC-V(最大400MHz)を搭載し、MIPI-CSI/DSIによる1080pカメラ入力・ディスプレイ出力、ハードウェアH.264エンコーダ(1080p@30fps)、55本のGPIOを備えています。
注目点はWi-Fi/Bluetoothを内蔵しないこと。無線通信はESP32-C6などのコンパニオンチップと組み合わせる設計です。WaveshareやGUITIONからP4+C6を統合した開発ボード(約14ドル〜)が発売されています。
ESP32-C5:業界初デュアルバンドWi-Fi 6対応MCU
2025年5月に量産開始されたESP32-C5は、RISC-Vベースで2.4GHz + 5GHzのデュアルバンドWi-Fi 6(802.11ax)に対応した業界初のMCUです。従来のESP32はすべて2.4GHzのみだったため、5GHz帯が使えるのは大きな進化です。さらにBluetooth 5やIEEE 802.15.4(Zigbee/Thread)にも対応しています。
CES 2026で発表:ESP32-E22とESP32-H21
ESP32-E22はWi-Fi 6E(2.4/5/6GHz トライバンド)に対応し、2×2 MIMOで最大2.4Gbpsのデータレートを実現。デュアルコア500MHz RISC-Vプロセッサを搭載し、無線コプロセッサとして動作します。
ESP32-H21は超低消費電力BLE MCUで、96MHz RISC-V、320KB RAM、BLE + IEEE 802.15.4対応。ウェアラブルやバッテリー駆動IoTノード向けです。
開発フレームワークの進化
ESP-IDF 6.0(2026年2月リリース)
ESP-IDFのメジャーアップデートであるv6.0が2026年2月13日にリリースされました。主な変更点はMbedTLS v4シリーズへのアップグレードとPSA Crypto APIへの移行です。暗号化APIの使い方に破壊的変更があるため、既存プロジェクトの移行には注意が必要です。
Arduino ESP32 Core 3.x
Arduino ESP32 Core 3.0はESP-IDF 5.1ベースに刷新され、ESP32-C6やESP32-H2のサポートが追加されました。8つの周辺機器APIが更新され、ネイティブI2Cオーディオライブラリ、Ethernet SPIサポート(W5500、DM9051等)も追加されています。2.x系からの移行には破壊的変更があるため注意が必要です。
セキュリティ:CVE-2025-27840「バックドア」騒動
2025年3月、ESP32に29個の文書化されていないBluetooth HCIコマンドが見つかり「バックドア」として話題になりました。しかしEspressifは、これらはデバッグ用コマンドであり物理アクセスなしにはリモートで悪用できないと説明。ESP-IDF v5.5でこれらのコマンドをデフォルト無効化する修正が行われました。
Matter/Thread対応の成熟
スマートホーム標準プロトコル「Matter」への対応が着実に進んでいます。ESP32ファミリーはMatter 1.0認証を取得済みで、Thread Border RouterソリューションもThread V1.3認証を取得しています。ESPHome 2025.6.0ではOpenThreadサポートが追加され、ESP32-C6/H2をThreadエンドポイントとしてHome Assistantに直接接続できるようになりました。
まとめ
ESP32ファミリーは単なるWi-Fiマイコンから、Wi-Fi 6/6E、Thread/Matter、AI推論、1080p映像処理まで対応する総合IoTプラットフォームへと進化しています。用途に応じて最適なチップを選べるラインナップの充実が最大の魅力です。次回はESP32でのAI/TinyMLについて詳しく解説します。
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