要約
中国メーカーから個人輸入した ESP32 系ボード (含む WiFi6 モジュール) を、国内のメイカーコンテストに展示することを考えるとき、最初にチェックすべきは「そのボード上の無線モジュールに技適マークがあるか」。
技適マーク (Telec) は電波法に基づく型式認定で、これ無しの無線機を電波を出す状態で国内使用すると電波法違反になる。特例制度 (180 日試験運用) はあるが、公開イベント常時運用には合わない。
技適未確認ボードを「使うかどうか」を悩むのではなく、技適なしを前提にハードウェアアーキテクチャを設計し直すのが正しい意思決定。本記事ではその意思決定を最近実例ベースで整理する。
何が問題なのか
ESP32 系ボード、特に 「ESP32-P4 + ESP32-C6 (WiFi6 コンパニオン)」を組み合わせた製品は、Espressif 単体モジュールでは技適済の variant があるが、第三者メーカーが基板に載せて組み立てた完成品は技適マーク (基板上のシールド表面に R 003-XXXXXX の刻印) がそのまま継承されないことが多い。
具体例:
- Espressif の
ESP32-C6-WROOM-1モジュールには技適済 SKU が存在する - ところが Waveshare 系の「ESP32-P4-WIFI6-Touch-LCD-XC」のような完成品ボードに載っている ESP32-C6 が、技適済 SKU を使っているとは限らない
- ボード上のシールドに R 番号が刻印されているか目視確認するしか手段がない
筆者の手元の Waveshare ESP32-P4-WIFI6-Touch-LCD-3.4C は 目視で技適マーク確認できずだった。
電波法の建付け
総務省の電波法では、技適マーク (技術基準適合証明、特定無線設備の技術基準適合認定) 未取得の無線設備を国内で電波を発射する状態で使用すると違反となる (第 4 条 / 第 38 条系)。
ただし救済として 電波法第 4 条の 2 に基づく「実験等無線局」/「特例制度」 があり、開発・実験目的に限り 180 日間届出ベースで使用できる枠が用意されている。
ただし これは「自宅・自社の閉じた環境で開発する」想定の制度で、
- 公開イベント (Maker Faire、コンテスト出展、商業展示) で「常時動いている」状態は実験運用とみなされにくい
- 違反扱いになると刑事罰 (1 年以下の懲役または 100 万円以下の罰金) の可能性がある
- 主催者側 (大型イベントは大概スタッフが電波法を理解している) から会場ルールでも止められる
「コンテストに出す」という目的なら、特例制度を当てにせず WiFi/BT を最初から使わない設計にするのが現実解。
設計上の意思決定
筆者の場合は ESP32-P4 系ボードを LCD ホストとして使う前提があり、「ボード上の WiFi/BT を一切初期化せず、有線通信に切り替える」設計を採用した。
具体的に何を犠牲にして何を残したか:
| 機能 | 当初の構想 | 技適なし前提後 |
|---|---|---|
| 無線測距 (UWB) | UWB チップ (Murata SR150/SR040) で実装 | 同じ (UWB は別途技適済モジュールを使用) |
| デバッグログ転送 | WiFi で開発端末に飛ばす | USB シリアルのみ |
| センサノードとの通信 | BLE / WiFi で散発接続 | 物理 UART 配線 |
| OTA ファーム更新 | WiFi 経由 | SD カード差し替え / USB |
| Web 設定 UI | スマホブラウザから WiFi 経由 | LCD タッチ UI のみ |
「物理配線で全部やる」と決めると、設計はむしろシンプルになる。ペアリング・認証・電波輻射の干渉考慮が消える。
チェックリスト: 自分のボードで何を確認すべきか
国内コンテスト用に中華製評価ボードを選ぶときは以下を順に:
- 基板上の無線モジュール (銀色シールド) 表面に技適マーク or
R 003-XXXXXXの刻印があるか目視 - メーカー商品ページに「Japan / 技適 / Japanese certification」明示があるか
- 国内代理店経由なら、その代理店が技適済バージョンとして売っているか
- どれもダメなら → そのボードの WiFi/BT は使わない設計にするか、技適済の別ボード (ESP32-DevKitC-32E など) に置き換える
技適済 ESP32 系の入手:
- 国内代理店 (秋月電子、スイッチサイエンス、マルツ等) から正規流通品を買えば技適マーク済 (
R 003-XXXXXX刻印あり) - AliExpress / Taobao から個人輸入したものは大概グレー
まとめ
- 公開イベント展示が前提なら、WiFi/BT を使う設計を最初から避けるのが安全
- 技適マークの有無は ボード本体ではなく、基板上の無線モジュールのシールドに刻印されているかで判断
- ハードウェア構成を「技適なしを前提に再設計」する方が、特例制度を当てにするより早くて確実
- 開発生産性的にも、有線通信に絞ると ペアリング・認証・電波干渉が消えてシンプルになることが多い
最近の組込デバイスは「WiFi/BT が付いてるのがデフォルト」になっていて、それを使わない設計を最初から組むのは少し勇気がいるが、コンテスト出展という目的を考えると、技適まわりは設計上の制約ではなく前提として扱うべき項目。
電波法は古い法律だが、まだ生きている。
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