連載 #0 ドラゴンレーダーを真面目に作る

何を作るか

ドラゴンボールに出てくる「ドラゴンレーダー」を、現代の UWB (Ultra-Wide Band) 測距技術で本当に動くハードウェアとして作る

具体的に:

  • プレイヤーが持つ円形 LCD 端末に、周囲のドラゴンボールが距離と方向と共に表示される
  • ドラゴンボール側は小型タグ (UWB トランスポンダ) で、複数個 (理想は 7 個) を会場に散らせる
  • LCD は玩具版ドラゴンレーダー (1980 年代バンダイ) の画面をオマージュした緑グリッド + コーラル三角ポインタ + ゴールド光点
  • 押せばボタン音、近づけば効果音 (SE)、見つけたら BGM

これを DigiKey Make ONE Challenge 2026 (応募締切 2026-06-22) に出展、その後 9 月の Maker Faire Tokyo にデモ持ち込みする計画で動いている。

なぜ UWB か

ドラゴンレーダー作品は過去にもファンメイドで何度か試みられているが、ほぼ全て GPSBLE RSSI画像認識 ベースで作られていて、

  • GPS は屋内で精度が出ない、しかも数 m 単位の誤差
  • BLE RSSI は壁 1 枚で値が乱れる、向き判定不可
  • 画像認識はカメラ視野内しか見えない、隠されたら終わり

5 cm 精度で距離が分かる、向きも 1〜2° で分かる、見通し外でも壁 1 枚なら抜ける」という条件を満たすのは UWB が唯一の現実解。スマホ (iPhone 11 以降、Pixel 6 Pro 等) にも入っている技術で、AirTag が「家具の裏のものを正確に指し示す」のはこれ。

ハード的には NXP の SR150 (ホスト + AoA 対応) と SR040 (タグ専用、超低消費電力) を採用する。Murata から評価ボード (Type 2BP / Type 2DK) が出ていて、国内技適も取られている。

なぜバンダイ風 UI か

「Apple Find My っぽい現代的な UI」も検討したが、面白くない。

ドラゴンレーダーは 1984 年に玩具として実物が存在する (バンダイ商品)。緑の LCD に緑のドット、ゴールドの数字、コーラル色の三角ポインタ、円形フィルムを回すスイープ。子供だった世代が大人になった今でも、この画面を見せると「あっ」となる

技術が当時のフィクションに追いついた瞬間を、当時のビジュアル言語のまま届ける。これが本作品のテーゼ。

構成の全体像

[ プレイヤー手持ち端末 ]
  ESP32-P4 (RISC-V 400MHz, PSRAM 32MB)
    + 800x800 円形 IPS LCD (Waveshare 3.4C)
    + LVGL 9 (Bandai 風レーダー UI)
    + microSD (BGM/SE/ボイス)
    + I2S Codec ES8311 + スピーカー
    +─[UART 3Mbps 有線]─ Type 2BP EVK (QN9090 + SR150 UWB)

                                    ↕ UWB 6.5GHz (Ch5/9)

[ ドラゴンボール (タグ) × 7 個 ]
  Type 2DK EVK (QN9090 + SR040 UWB)
    + 樹脂筐体 (3D プリント、内側に光ファイバー散らし)
    + 単 4 電池 × 2

ESP32-P4 と Type 2BP は 物理 UART で直接配線する。WiFi / BLE は技適まわりの判断から使わない。

工程と現状

Phase 内容 状態
0 部品入手、SDK 入手、開発環境構築
1 ESP32-P4 上で LCD + Bandai UI が動く (ダミーデータ)
2a NXP UWBIOT SDK の MCUXpresso ヘッドレスビルド検証
2b QN9090 ファーム改造で UWB ranging 結果を ASCII で吐かせる
2c 改造ファームを焼いて、UART 3Mbps で距離 + 方位が流れることを実機確認
2d ESP32-P4 ↔ Type 2BP の物理 UART 配線 + LVGL に実データ反映 進行中
3 ドラゴンボール側 (Type 2DK) のタグ化 ファーム + 筐体 これから
4 音声 / 効果音 / BGM これから
5 全体筐体 CAD + 組立 これから

開発開始は 2026-04-29、応募締切は 2026-06-22。今のところスケジュールに 1 週間以上の余裕がある。

なぜここに書くか

この作品は趣味として作るが、過程で得た技術知見 (UWB / NXP UWBIOT SDK / ESP-IDF / LVGL / 組込ハード設計 / 技適) は 同じことをやろうとする人にも役に立つはず。なので進行中の発見を分割して記事にしていく。

最初に切り出すのは以下:

  1. dk6prog で QN9090 を USB ISP だけで焼く ← SWD ハード無しでもファーム書ける話
  2. MCUXpresso headless build でファームを 10 秒で回す ← IDE を立ち上げずにビルド
  3. UWB ranging が動かない原因は UCI 世代差だった ← 異種 UWB チップを組ませる時のハマりどころ
  4. ESP32-P4 × LVGL で Bandai ドラゴンレーダー UI を作る ← 玩具っぽい温かみある UI を LVGL で
  5. 技適未確認ボードをコンテストで使うなら ← 国内出展のための設計判断

本作品の進捗は完成までこのブログで時系列に記録する。完成しなかったらそれもまた記録として残す。

期待値の調整

「ドラゴンレーダーが動く」とは何か、最初に明確にしておく:

  • ✅ 5 cm 程度の距離精度で近くにあるボールの距離が分かる
  • ✅ AoA でボールの方向 (左右) が分かる (前後判定は補助的)
  • ✅ 7 個まで同時表示できる (round-robin で測距)
  • ❌ 壁を貫通する透視能力は無い (UWB は壁 2 枚以上で減衰する)
  • ❌ 「ピッピッ」音は出るが、原作のサーチ音とは違う (著作権)

現代の物理法則の上で実装可能な範囲で最大限フィクションに近づける、それが本作品の制約。

完成記事 (動作デモ動画 + 全工程まとめ) は 6/22 直前に公開予定。それまでは過程の知見を順次共有する。

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